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Matthias Rößler - 20. January 2021

欧州単一特許 および統一特許裁判所

ドイツ、単一特許に関する協定を2020年末までに批准する見込み

新たな仮差止請求により単一特許導入が再度遅延

連邦憲法裁判所は2020年3月の判決において、2017年3月に可決された当初の法律は無効であると判断しました。 法律の成立に必要な議員3分の2以上の賛成票が得られなかったためです。

統一特許裁判所協定(UPCA)関連新法案は、2020年11月、必要な3分の2以上の賛成票をもって可決されました。しかし、この直後、新たに2件の仮差止請求が提出されたことにより、単一特許制度の導入には新たな遅延が見込まれています。

単一欧州特許制度

本制度は 欧州連合(EU)における特許の維持および管理を標準化または統一するという考えです(単一効果を有する欧州特許)。現在、欧州特許はEU加盟国ごとに手数料を支払い、維持されています。また、侵害訴訟および無効訴訟も各国で個別に手続きを行う必要があります。

特に、複数のEU加盟国で行われた侵害行為に対する申立てに関しては、共同で決定し、各国で有効となる統一裁判所システムを構築する必要があります。統一特許を可能にするためには、統一特許裁判所(UPC)の設立が条件となります。

しかし、このシステムには、各国の関連当局および裁判所等の管轄をEUに移管する必要があるため、EU加盟国の同意が必要となります。現在までドイツでの批准が行われていないため、このEUプロジェクトは延期されている状態です。

先の見えない将来

欧州単一特許を当初から主導してきたのは、ドイツ、フランス、イギリスでした。EU加盟国諸国からはさまざまな抵抗がありましたが、2017年ようやく、EU加盟国においてシステムを導入し、必要な施設の設立、弁護士および裁判官のためのトレーニングコースを開始する準備が整いました。すべての準備が整った時点で、ドイツが批准をする、というシナリオでしたが、ドイツで最初の仮差止が請求され、次に英国の欧州離脱という事態が発生したのです。

英国は、2020年7月に英国の欧州連合離脱の一環として批准を取り下げました。この撤回が統一特許裁判所協定(UPCA)に準拠したものであるかどうかは、まだ最終的な決定は出ていません。欧州単一特許制度導入に非常に重要な責任を果たしてきた英国のEU離脱は、多くの疑問と埋めることのできない虚無感を残しました。また、すでに計画されていた英国での裁判所、その他の機関の設立を、どのEU加盟国が引き継ぐか再度交渉しなくてはならなくなりました。

いずれにせよ、ドイツによる協定への批准が新たに延期されたことにより、残りのEU加盟国にとっては、英国のEU離脱により振出に戻った施設等の設立および制度の再編成のために十分な時間が確保できたとも言えます。特にイタリアとオランダがこの役割を担う準備があると表明しています。

 

Matthias Rößler:



マティアス・レースラー弁理士(ドイツ、および欧州)。karo IP知財法律事務所の創立パートナー。2003年弁理士登録。アーヘン工科大学卒業、機械工学専攻。2006年法学修士号取得。

主たる取り扱い分野は、膨大な特許ポートフォリオの管理・代理人業務、欧州特許庁や特許裁判所における二国間訴訟の代理人業務。弁理士のみならず法律家としても、日系企業を含む多国籍案件を多数担当。

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