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Matthias Rößler - 20. November 2020

標準必須特許の極意 ~ドイツ弁理士の目

欧州知財弁理士、アーヘン工科大学知的財産法コース講師のレースラーです。

ヨーロッパ最大の日本人街デュッセルドルフで約20年間、日系企業を含む世界の発明家達のために知財保護活動をしています。このブログでは、欧州知財の様々な話をドイツから発信していきます。


標準ベースのテクノロジー

特許法の世界では、異なるテクノロジーシステムの相互作用が注目されています。特にIT、電気通信、医療技術、車両技術の技術分野においてその動向が顕著と言えます。私なりに気になる点をまとめてみました。

IT業界、特にインターネット産業では、グローバルに適用できる技術開発の標準化が急務の様相です。世界基準で統一された技術を使用することで、新製品や新技術を導入する際の使いやすさが格段に良くなります。対応する基準は国際標準化組織によって設定されます。ゆえに、様々なメーカーの製品とそのアプリケーションを相互にネットワーク化するためにも、相関性のある仕組みが必要です。

さて、こうした規格に特定技術が紐づくケースがあります。その特定技術が規格使用に必要不可欠なものであれば、規格使用のたびに当該技術を使用することになります。当該技術が特許で保護されているケースもあります。

こうした動向は特に電気通信分野において顕著であり、すでにいくつかの事例もあります。Internet of Things(IoT)は、特にネットワーク化されたホーム(Smart Home)や製造(Industry 4.0)の分野で、ますます多くの技術開発の標準化を進めています。


SEPのFRAND準拠ライセンス

SEP(標準必須特許)の利用を希望するメーカーは、まず標準化された関連技術のライセンスを得なくてはいけません。一方、標準必須特許の保有者はFRAND(公正、合理的、非差別的な条件)のもと、利用者にライセンス供与する必要があります。

SEPの利用問題については、合理的なFRAND条件のライセンスをめぐってしばしば論争が起きます。合意に至らない場合、新製品を市場に出すことができない、あるいは、中止を余儀なくされるケースも想定されます。

FRANDを経たライセンスの目的は、全市場参加者に標準必須特許のライセンスを供与し、統一されたフレームワーク条件を保証することです。これにより、エンドカスタマーは多種多様な製品を安心して楽しめるようになります。


コネクテッドカー

karo IPの得意ジャンルでもあるクルマとIT。世界的な自動車産業国のドイツで長年、自動車業界における知財保護を手がけてきた立場として最近特に気になるのが、コネクテッドカーです。製品、デバイス、アプリケーションのネットワーク化が進むにつれ、ますます多くの通信技術が車両に搭載されてきました。 多くの場合、これらは多数のSEPによって保護されています。

さて、ここデュッセルドルフは日系企業が多い街としても知られていますが、知財の取り扱いなどに関する争いが行われる「デュッセルドルフ地方裁判所」があります。実はこの裁判所で先日まで行われていた有名な知財訴訟が、かのノキアとダイムラー間における「コネクテッドカーの通信機器技術におけるライセンス供与」問題です。

チップメーカー、ラジオユニットのメーカー、自動車メーカーに適切なライセンスを要求するかどうかについて、SEPの所有者が自由に選択できるかどうかを決定する問題です。この論争は、我々士業のみならず関連メーカーの皆さんにとっても非常に興味深い論争であり、ついに争いの場が同地裁からECJ欧州司法裁判所へと移されることになりました。ECJの判断は、まもなくです!

karo IPの特許弁護士は、このようなネットワーク技術の市場投入の開発と準備を喜んでサポートします。ちょっとしたことでも、日本語、ドイツ語、または英語でお気軽にお問い合わせ下さい。

Matthias Rößler:



マティアス・レースラー弁理士(ドイツ、および欧州)。karo IP知財法律事務所の創立パートナー。2003年弁理士登録。アーヘン工科大学卒業、機械工学専攻。2006年法学修士号取得。

主たる取り扱い分野は、膨大な特許ポートフォリオの管理・代理人業務、欧州特許庁や特許裁判所における二国間訴訟の代理人業務。弁理士のみならず法律家としても、日系企業を含む多国籍案件を多数担当。

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