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Justus Kreuels - 29. August 2022

権利移転および表示変更登録手続き

財産法とは異なり、特許・商標、意匠権の善意の取得は一般的には不可能です。したがって、権利者(発明者、設計者等)の権利の移転は、その都度登録する必要があります。これを怠ると、存在しない権利を取得してしまう危険があるからです。

産業財産権(特許、商標、意匠)の移転申請登録には、世界共通の拘束力のある要件はなく、一部の国では、書面による申請を必要としています。また、権利移転に関する移転契約書がどの国の法律に基づいて締結されたかも重要となります。もちろん、これは産業財産権を有する国の法律である必要はありません。適用法はこれらの国の法律、または、産業財産権の前権利者および新権利者が居住する国の法律でも構いません。さらに、権利者が別の適用法を契約書に定めている可能性もあります。

特許登録に関する一般情報

特許登録簿には決定的な効果はありません。つまり、特許登録簿に登録されている人が実際の権利者である必要はありません。それでも、特許登録簿は、権利者を確認する際の重要な情報源として使用することができます。これは何を意味するかというと、特許登録簿に記載された権利者に異議を唱える者は、権利者が別に存在することを書面で証明しなければならないからです。これは特許に限らず、商標や意匠などの他の産業財産権についても同様です。

表示変更登録・権利移転登録の手続きは、すべての国際特許庁(ドイツ特許商標庁/DPMA、欧州知的所有権庁/EUIPO、欧州特許庁/EPO または世界知的所有権機関/WIPO)で行うことができます。

表示変更および権利移転登録に係る形式的および内容に関する要件は、各国で異なります。多くの国では、移転宣言の際に移転に係る権利および両当事者を指定するだけで十分ですが、特定のフォームや認証等が申請時に必要な国もあります。

権利移転手続きの重要性

産業財産権の権利者の変更等があっても、変更する義務はありません。実際に、権利者の変更や商号等の変更があっても、変更手続きを行わないことが多々あります。

特許、商標、または意匠権の移転手続きには、かなりの労力が必要です。特に、多くの国が関連している場合、その作業は膨大になります。現実に、費用が掛かるとの理由から移転手続きを疎かにし、産業財産権を行使する際に手続きすればよい、と考えている権利者が多いようです。また、手続きを行わない理由の一つに、産業財産権の実際の権利者が登録簿から知られてしまうことを避けたいという理由もあるようです。

しかし、権利者が登録簿に登録されていないことで、不利益が生じることも多々あります。移転を証明する書類は、移転から時間が経てば経つほど、入手が困難になることが多いからです。たとえば、契約書に署名した人物が既に存在しなかったり、権利を移転した企業が存在しなくなったり、商号が変更されていたりすると、必要書類の入手は非常に困難になります。このことから、権利が何度も譲渡され、権利の移転が特許登録簿に登録されていない場合、権利行使をするに際は、移転手続を行えるように特許庁にすべての権利移転の経過を通知する必要があります。

以上のことから、特許、商標、実用新案、意匠を取得した場合は、早急に権利移転登録申請を行うことをお勧めします。

早期手続きの勧め

通常、権利移転手続きに必要となる証明の入手は時間経過とともに困難になるから、という理由のみならず、早期変更手続きが権利者に利益となる理由は他にもあります。

たとえば、特許出願の権利者が変更された場合、特許出願の優先権を行使するには、優先権が新しい権利者に移転されたことを特許庁に別途証明する必要があります。変更手続きが早い段階で行われた場合、この証明は必要なく、労力の削減に繋がります。

各国への国内段階移行前に国際特許出願に変更がある場合は、WIPOに出願するのが効率的です。国内段階への移行後これを行おうとすると、各国で個別に実施する必要があるため、手続きは大変煩雑になります。

欧州特許出願の場合、EPOですべての移転手続きを行うことができます。欧州特許が付与されると、各国の特許庁が移転手続きを行うため、欧州特許が有効化された各国の弁理士を介して手続きする必要性が出てきます。このため、特に欧州特許が多数の国で有効化されている場合、相当な費用がかかる可能性があります。

変更手続きを後回しにすると、その手続きに関わる追加の労力および財務作業に掛かる費用は、膨大になる可能性があります。大規模な欧州特許の場合、費用が簡単に 10,000 ユーロを超えることもまれではありません。一方、特許付与前に変更手続きをすることで、500ユーロ未満で済むこともあります。権利の移転を考えている場合、これに配慮し、特許付与を遅れさせる等の策を考えておく必要があります。

外国語で作成された契約書が移転手続きのベースとなる場合、契約当事者の各国の公正証書および認証翻訳が必要になる場合があります。これが必要となる場合は、書き換えに伴う労力が大幅に増します。このような書類の合法化手続きは大変に煩雑で、どのタイプの認証がいつ必要になるかを規定する特別な国際協定が存在するほどです。

権利移転に各国の言語を使用した指定の用紙を使用することで、公正証書作成を回避することも可能です。このため、大規模な産業財産権ファミリー(多くの国で産業財産権を有すること)を移転する場合には、移転の戦略的計画を立てることをお勧めします。まず、移転に必要な書類について、各国の現地弁理士に相談することをお勧めします。現地代理人は、最も効率的な方法を選択し、提出書類を準備することができるからです。

産業財産権移転に関する契約書の作成

原則として、産業財産権の移転に関する契約は、端的で、担当機関への提出および翻訳に適したものでなければなりません。契約が複雑である場合は、必要に応じて、契約書に財産権の移転が明確に示され、担当機関における移転手続きに適した書類も付け加えることができませす。また、移転手続き中、前権利者に対して、移転手続きに尽力すること、そして必要文書に署名をすることを義務づけることも有益だと思われます。

Justus Kreuels:



karo IPパートナーである、ユストス・クロイエルスはミュンヘン工科大学およびアーヘン工科大学で機械工学を学び、2011年にドイツドイツ弁理士、2012年に欧州弁理士の資格を取得しました。特にドイツにおけるモバイル通信、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学分野での知的財産権に関するアドバイスを行っています。

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