新しい欧州単一特許と欧州特許との違い
単一効果を有する欧州特許(EU特許)は、既存の欧州特許(EP)とは大きく異なります。
EU特許にはEU加盟国全域で統一された特許保護が保証されています。 これに、EU加盟国数国にまたがる侵害行為に対し加盟国全体に有効な決定を下すことができる統一裁判制度加わります。 いわゆる単一特許とこれに属するする裁判制度の導入により、中期的にドイツでの特許戦略も根本的に変えざるを得ないと言えるでしょう。しかし、 単一特許は唯一の出願方法ではなく、既存の国内特許および欧州特許と共存するものです。
既存の欧州特許(EP)
欧州特許は、欧州特許庁での単一の出願および付与手続きを通じて取得することができます。 欧州特許は、欧州大陸の多数の加盟国(現在38か国)で有効となりますが、出願人は特許付与後どの加盟国で特許を取得するか、維持するかを決定しなければなりません。 これにより、非常に広範囲かつ選択的に保護を必要とする国を選択することができます。
既存の特許裁判制度
現在、欧州特許の個々の国内部分または当該国での侵害行為のみが、当該国の管轄を有する裁判所で扱われています。 国境を越えた侵害行為があった場合は、各国で個別の手続きを行い、国内での欧州特許への侵害と法的有効性を調査する必要があります。 この制度では費用が掛かりすぎ、各国で異なる裁判決定がなされる可能性があると見られています。
単一効果を有する欧州特許(EU特許)および単一裁判所
単一特許は、加盟する欧州諸国で統一された効果を有する権利です。
新たに創設される欧州官庁または欧州裁判所が、加盟国全域での法的有効性または経済地域全体での単一特許の違反行為に関して判断することになります。
この制度により、統一裁判所に統一された手順を経て、国境を越えた特許侵害問題に対し決定する機会が与えられます。 しかし同時に、この唯一の決定により特許を失い、経済領域全体を失うというリスクも高まります。
欧州特許法の改正を前に、特許出願人は将来的に国内特許、欧州特許または欧州単一特許のどれを出願するか決定しなければなりません。 これはまた、この改正に鑑み企業が今後特許戦略を調整または適応させる必要があることを意味します。
Matthias Rößler:
karo IPパートナーである、マティアス・レスラーは、RWTHアーヘン大学で機械工学を学び、2003年以来、ドイツおよび欧州特許弁理士として従事しています。特に大規模な特許ポートフォリオの管理、特許庁および特許裁判所における二国間の法的有効性手続きに関するアドバイスを行っています。