ブログ

Justus Kreuels - 14. June 2022

第三者による意見書の提出

第三者による意見書は、特許付与前に特許性を問う機会を付与するものです。

これには、なぜ特許付与は妥当でなく、特許出願が拒絶される理由について合理的に裏付ける先行技術を再度提示することが必要です。

 

第三者による意見書の提出時期

欧州特許出願が公開された後、第三者は意見書を特許庁に提出することができます。 意見書は、欧州特許庁の公用語 (ドイツ語、英語、またはフランス語) のいずれかで書面 (オンラインまたは郵送) で提出し、その詳細な理由を明記します。 欧州特許庁は、個別のケースに応じて公用語の 1 つへの翻訳を要求する場合があります。

第三者による意見書は、新規性や進歩性の欠如を理由とすることができますが、たとえば、明確性の欠如、開示不足、発明の特許性、または許容できない新規事項の追加等を理由とすることもできます。

欧州特許庁による審査

欧州特許庁による審査の後、第三者による意見書は公開され、出願人および特許権者にも転送されます。 その後、後者にはこれに対して陳述する機会が与えられます。

第三者が取るべき措置は公報で確認ができるため、欧州特許庁 が個別に第三者に通知することはありません。 

意見書が発明の特許性に疑問を呈する場合、係属中の訴訟手続も考慮する必要があります。 また、異議申立手続きとは対照的に、欧州特許庁での手続きには第三者は当事者にはなりません。

特許がすでに付与されている場合、第三者による意見書は考慮されません。 これらはファイルに添付され、付与された特許に対して異議申立てが提出された場合にのみ処理されます。

匿名性

第三者による意見書は、特許所有者に対して身元を明らかにする必要はなく、匿名で行うことができます。 このため、提出者の身元を隠すために「ストローマン」を利用する必要はありません。

一方、異議申立続きには、提出者の身元を秘匿したい場合、「ストローマン」が必要となることから、意見書の提出は労力の削減になります。

第三者による意見書提出の利点

第 115 条に基づく第三者による意見書は、出願手続きおよび異議申立手続中でも提出することができます。

第三者による意見書が特許の付与を阻止する効果的な手段となり得るかどうかは、個別に確認する必要があります。 付与前の意見書提出は、特許付与後の特許に対する異議申立手続きと比較して、費用対効果の高い代替案となる可能性があります。

しかし第三者による意見書提出を過大評価するのも危険です。 特許審査官は通常、特許性を評価するための戦略があり、新規性の欠如を指摘する第三者による意見書は成功する可能性があるものの、発明レベルに対する意見書提出は成功する可能性は低いとされています。この場合、異議申立手続きの方が可能性が高いと言われています。

第三者による意見書の提出に関するもう 1 つの問題は、第三者の意見書によって特許付与手続に使用される文書は、「新しい」文書としてその後の異議申立手続きに使用することができないことです。 後の異議申立手続では、そのような文書は既知とみなされ、これらの文書から特許性の欠如について新たな結論を導き出すことを正当化することは困難になる可能性があります。

国際手続きにおける第三者による意見書

第三者による意見書は、DPMA、EPO、および米国特許庁を含む他の多くの特許庁に提出できます。

2012 年 7 月以降、国際特許出願においても第三者による意見書を提出することができます。 第三者は、優先日から 28 か月以内に国際段階で PCT 出願に関する意見書を提出することができます。

法的有効性への第三者による意見書の影響

ドイツでは、いわゆる分離原則が特許の法的有効性に適用されます。 これは、侵害訴訟では特許自体の有効性が求められ、特許無効訴訟では特許の有効性に対する反論を抗弁とするには、特許の有効性に対する別の手続きが必要であることを意味します。

基本的に、侵害訴訟における特許の法的有効性に対する主張は、特許無効訴訟において特許が取り消される可能性が高い 場合にのみ認められます。

特許裁判所の特許裁判官は、これを評価するために補助的な目安を設けています。重要な目安は、特許がすでに有効性手続き、たとえば異議申立や過去の特許無効手続きを成功裏に終えているかです。 つまり、第三者 (特許庁でない) が特許を破棄しようとした、いわゆる二つの法的有効性手続きが特許権者の有利に終了した場合、特許侵害者が特許性に対する反論を検討するよう特許裁判官を説得することは非常に困難であるということです。

特許付与手続において、第三者による意見書の法的有効性については、繰り返し議論されてきました。 今後、第三者による意見書の提出も有効な戦略であることを知っておくべきでしょう。

Justus Kreuels:



karo IPパートナーである、ユストス・クロイエルスはミュンヘン工科大学およびアーヘン工科大学で機械工学を学び、2011年にドイツドイツ弁理士、2012年に欧州弁理士の資格を取得しました。特にドイツにおけるモバイル通信、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学分野での知的財産権に関するアドバイスを行っています。

>> 

>> ブログへ戻る

その他の記事。

統一特許裁判所現在の動向
Matthias Rößler - 20. July 2023

特許法における人工知能
Justus Kreuels - 19. May 2023

仮想商品の商標登録
Matthias Rößler - 1. March 2023

特許異議申立
Justus Kreuels - 26. January 2023

インターネット上の知的財産権侵害
Matthias Rößler - 14. December 2022

知的財産デューデリジェンス
Justus Kreuels - 3. November 2022

登録商標の監視
Matthias Rößler - 26. September 2022

特許庁での権利移転登録申請手続き
Justus Kreuels - 29. August 2022

商標の国際登録制度
Matthias Rößler - 27. July 2022

特許調査、特許データベースおよび調査費
Matthias Rößler - 20. April 2022