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Matthias Rößler - 26. September 2022

商標権侵害の防止

商標局は、類似または同一の商標審査を行わないため、商標権者は常に商標登録を監視する必要があります。登録商標の監視は、特に商標の潜在的な侵害を早期に特定するのに有効です。

独自に行う同一性・類似性調査

DPMA、EUIPO、および WIPO のデータベースには、出願手続き中および登録済みのすべての商標が記録されています。 ただし、新しい商標を登録する際、これらの商標局は職権での、類似または同一審査を行うことはありません。

このため、後の出願者が自社の商標と類似または同一の商標を登録することがあります。

商標登録の定期的な監視

継続的に商標を監視することにより、類似または同一の商標登録を早い段階で確実に発見することができます。一般的に商標権には使用義務が存在するため、既存の商標侵害に十分余裕をもって対処できます。

商標権者が自ら、類似または同一の商標が出願されているか、または登録簿に登録されているかを調査するのが原則です。

しかし、この監視は複雑であることから、時間と労力が掛かるのも事実です。たとえば、ドイツの商標を有する商標権者として、監視するのはドイツ商標だけではなく、欧州連合商標や国際登録制度に基づくドイツでの商標も監視する必要があります。 欧州連合商標の商標権者としては、EU のすべての国内商標も監視する必要があります。

商標監視の際、多くの類似した商標出願が検索結果として現れることがあります。このため、どの商標に対して措置を講じるか、どの手段が効率的か等判断するための商標分析が必要となります。これらの分析には専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

後願登録商標に注意

特許・商標の専門家は、商標登録のデータベースのみならず、有料の商標監視用データベースを使用して調査します。

  • 専門家は新たに登録された国内外のすべての商標また商標出願を常に監視してます。
  • 同一性調査とは同じ商標がないか調査することです。
  • 類似性調査とは単語の構成要素、スペル、または比喩的な要素が類似している商標を調査することです。
  • 調査対象は商品クラスおよびサービスクラスになります。

商標を監視することにより、別のブランドと混同されるような重大なリスクがあると判明しても、すぐに対処することができます。

望ましくない商標登録が検出された場合の対処方法

後願商標が自社商標の保護範囲と重複している、またはその範囲に影響を与えていることが判明した場合、異議申立を行うことができますが、この場合、商標権者は後願商標の公開から 3 か月しか猶予がありません。また、この異議申立手続には、監視措置の記録および調査報告書を記録した書面が必要になります。

通常、異議申立手続が実施される前には、後の商標出願人と合意に至る十分な時間が与えられます。このため、後の商標出願人が保護範囲を制限したり、商標の使用を制限したりすることもあります。また、いわゆる商標使用制限契約を締結することも可能です。異議申立手続きの申請を行い、手数料を支払っていたとしても、異議申立手続の開始前に合意に達した場合は、異議申立手数料は返金されます。

異議申立期間が過ぎた場合、複雑な抹消手続きが開始される可能性があります。また民法上の差し止め、損害賠償等の手続きを申請することもできます。

Matthias Rößler:



karo IPパートナーである、マティアス・レスラーは、RWTHアーヘン大学で機械工学を学び、2003年以来、ドイツおよび欧州特許弁理士として従事しています。特に大規模な特許ポートフォリオの管理、特許庁および特許裁判所における二国間の法的有効性手続きに関するアドバイスを行っています。

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