NFT(非代替性トークン)
NFTは、ブロックチェーンにより発行・保存されるデータです。各トークンには識別子が付けられているため、「唯一無二」である証明が付与されます。
NFTを購入することで、購入者は画像、動画、音楽などのデジタルアート・コンテンツの共同所有者になります。原則として、すべてのコンテンツをデジタルトークンとして発行することができます。
仮想商品のためのブランドポートフォリオの拡張
仮想商品およびビジネスモデルの発展に伴い、商標登録、商標権の行使および防御にも大きな影響が及んでいます。
商標の観点から見れば、デジタルアイテム・コンテンツの商標ポートフォリオの拡張は、企業にとって有益であることが多々あります。Nike、Crocs、L'Oréalなどの一部の企業は、すでにEUIPOへの商標登録の拡張を申請しています。例えばNikeは2021年末「デジタルアイテム(靴、衣類、バッグ、スポーツ用品など)」として商標を米国で登録しました。
NFTに関連する商標侵害
近年、Nikeはナイキシューズの収集家へNFTを販売したとして取引プラットフォームStockXを提訴しました。StockXは靴自体は安全に保管されており、これらの靴のシェアをNFTとして購入できると主張しています。Nikeによると、StockXはNikeの靴に関連して500以上のNFTを販売しており、Nikeはこれを商標権侵害であるとし、Nikeの靴がこのように第三者によって転売されるのを阻止する考えです。また、最初の市場投入による商標権が消滅することで、ブランド製品の転売が可能になり、NFTとして販売することで新製品が生まれ、市場投入から時間が経過しても商標権が復活する、とNikeは解説し、NFT仮想価値は、商標侵害、および商標の希釈化を促すと主張しています。
また最近、NFT関連で、著作権侵害、つまりアーティストの許可なく、作品のNFTが発行されるという問題が多発しています。映画「パルプ・フィクション」の監督クエンティン・タランティーノが作品の所有権を有する制作会社であるミラマックスの許可なくNFTを発行し、訴訟が発生した、というのがその例です。いわゆるアーティストと制作側の作品の所有権を争う訴訟です。
NFTによる製品模倣に関し最近の話題になったのが、Hermèsのデザイナーハンドバッグシリーズ「バーキン」に係る商標侵害です。Hermèsはアーティストのメイソン・ロスチャイルドは高級ブランド、Hermèsの許可なく「MetaBirkinsNFT」を開発および販売したとし提訴を考えています。
法的課題
NFTおよび仮想商品に関連して、興味深い商標法に関する課題が持ち上がっています。
原則として、仮想商品には「実際の」商品と同じ条件が適用されます。つまり猶予期間の終了後、登録商標が仮想空間内で使用されていない場合、第三者は商標の消滅を申請することができます。(ブログ記事「登録商標の使用証明」をご参照ください)。
デジタルコンテンツおよびサービスを登録できるかどうか、既存の知的財産権が侵害されるかどうか、または第三者による仮想製品の商標の消滅申請を許可する必要があるかどうかについての議論は、今後裁判所で判断されます。
仮想商品およびサービスの商標出願に意義があるのか、もしあるのであれば、どの程度意義があるのか、またはその展望については、個々のケースで決定することが重要となります。当所は、特許法および商標法を専門とする法律事務所として、デジタル技術に関する特許および商標の保護と防御のあらゆる側面についてクライアントの皆様にアドバイスをしています。
Justus Kreuels:
karo IPパートナーである、ユストス・クロイエルスはミュンヘン工科大学およびアーヘン工科大学で機械工学を学び、2011年にドイツドイツ弁理士、2012年に欧州弁理士の資格を取得しました。特にドイツにおけるモバイル通信、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学分野での知的財産権に関するアドバイスを行っています。