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Justus Kreuels - 1. June 2021

「Patent Pending」という表記のドイツでの広告利用

「Patent Pending」表記に関するドイツ上級州裁判所の判決

特許庁に特許出願を行っても、すぐに特許が付与されるわけではありません。審査請求を行い、審査官により出願内容が審査(審査段階)されるため、特許付与までには通常数か月かかります。特許出願中の製品に、特許出願中であることを示すための「Patent Pending」(パテントペンディング/PAT.P)という表記が使用されることが多々あります。このような表記はドイツでは、誤解を招く危険の大きい、宣伝行為であると考えられています。

2017年ミュンヘン上級州裁判所は、ドイツで特許が係属中である製品に対して、広告として、製品パッケージまたは製品自体に英語で「Patent peding」と表示することは、容認できない誤解を招く表記である可能性がある、と判断しました(U 3973/16)。広告主が特許出願人である場合も同様であるとしています。

誤解を招く表記

「Patent Pending」という用語の明確なドイツ語翻訳は存在しません。「Pending」とは、結果がまだ出ていないという意味の「未決」、あるいは「出願済み」という事実に重点を置く「係属中」という翻訳を当てることができます。

しかし、「Patent Pending」という英語表記が与える印象は、それを目にする一般市民によってさまざまであるため、誤解を招く可能性があります。例えばドイツの一般消費者がこの表記を見たとき、「特許付与済」と理解する恐れがあるということです。一般消費者は必ずしも技術的知識を持っているとは限らないことも指摘されています。

原則として、商品の説明は正確であり、特許法と関わりがない人であっても誤解が生じないものでなければなりません。ドイツ以外の国においてのみ特許が付与された、または特許出願を行っている場合、このような表示はドイツで使用されるべきではありません。「国際特許」などの表記の使用は、基本的に誤解を生じさせ、実際の権利状況とは異なることから、問題であると言わざるを得ません。

法的根拠としての不正競争防止法および特許法

上級州裁判所の判決は不正競争防止法5条1項1文に関連する不正競争防止法の3条1項を法的根拠としています。まだ実際に付与されていない特許に関して、宣伝文句として販売競争に利用するのは、消費者に誤解を招く恐れがあります。たとえば「Patent Pending」という表現は、この製品またはこの機能が当該企業からのみ入手可能であるという印象を消費者に与えます。誤解を招くような販売活動は許容されず、不正競争とみなされます。

さらに、特許法46条でも、特許または特許出願を宣伝文句として利用し、製品またはサービスを広告する企業に対し情報開示を請求できる権利を定義しています。このような宣伝文句を利用する広告主は、正当な利益を有する者の要求に応じて、当該表示がどの特許または特許出願に基づいているか等の情報を開示しなければなりません。ただし、正当な利益とは、単なる私的な利益以上のものを意味します。たとえば、この権利を主張するには、各業界の協会、あるいは競合他社である必要があります。「特許取得済み」という表示を行う場合は、必要に応じて、特許番号を併記するのも得策です。

特許出願人が注意すべきこと

特許付与を待つ出願者は、審査段階でこのような表記を使用して製品のマーケティングまたは特許を言及することに注意して取り組む必要があります。製品のマーケティング目的で外国語の表記を使用する場合、そして、その情報がドイツの消費者を対象としている場合は注意が必要です。

公開された、あるいは、ドイツまたはヨーロッパで出願中の技術、サービスのみが「特許出願中」というドイツ語の表記を付すことができます。原則として、まだ公開されていない特許出願は、このような表記を避けるべきでしょう。

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Justus Kreuels:



karo IPパートナーである、ユストス・クロイエルスはミュンヘン工科大学およびアーヘン工科大学で機械工学を学び、2011年にドイツドイツ弁理士、2012年に欧州弁理士の資格を取得しました。特にドイツにおけるモバイル通信、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学分野での知的財産権に関するアドバイスを行っています。

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